量子論のパイロット解釈

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パイロット解釈

はい、皆さんの「興味ねぇよ」という感じをひしひしと感じながら、パイロット解釈の続きです。

一粒の量子を発射したにも関わらず、2つの溝(スリット)を同時に通過したとしか思えない結果となった「二重スリット実験」。

その結果を受けて「量子は観測しているときは粒であり、観測していないときは複数の可能性が重なりあった波の状態である」との解釈が生まれました。これが現在主流となっている「コペンハーゲン解釈」です。

【参考】

しかしこの超物理的な解釈が「感覚的に受け入れがたい」との思いは、科学者だって同じです。

そんなときに提唱されたのがこのパイロット解釈。物理学者デヴィッド=ボームが、ルイ=ド・ブロイの説をベースに発展させたことから「ド・ブロイ=ボーム解釈」とも呼ばれています。

複雑でわかりにくい理論ではありますが、ざっくりいうと以下の通り。

すなわち量子はあくまでも粒の状態であり、単体で干渉縞を描くのは量子が進むより先に道筋となる波が出されているから。この波を「パイロット波」と呼びましょう。

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まず量子を発射すると

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道筋となるパイロット波が出るよ。パイロット波は見えないけど波だから、干渉縞ができるよ。

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発射された量子はその波に乗って進むから、結果が積み重なればやがて干渉縞ができるよ。

という感じ。

 

パイロット解釈の欠点

「重なり合わせ!」とか無茶苦茶言うコペンハーゲン解釈に比べ、古典物理学に則った実在論で説明できることから、このパイロット解釈は、当時は多くの科学者に歓迎されたようです。

しかし残念ながら、その栄華もひとときのこと。やがて失速し、物理界で忘れ去られていくこととなります。

その理由のひとつはパイロット波って何よ?」ということ。つまり、こういう存在を仮定すれば説明はできる、というだけで、その証明には至らなかったのです。

また、方程式が複雑になるわりに、確定する量子の座標がシュレーディンガーの提唱する波動方程式と変わらないこともマイナスだったようです。同じ答えが出るなら、遠回りより近道の方が良いですよね。

さらにもうひとつの問題、つまり「観測下と非観測下の結果の違い」に対しても、パイロット解釈は説明しきれませんでした。

目の前に確かな実験結果が示されているわけですから、いかに信じがたい解釈であろうと、それを受け入れるほかなかったのです。

そんなわけでパイロット解釈は、一度は表舞台から遠ざかりました。

パイロット波の可視化

流れが変わったのはそれから半世紀近く経過した2005年のことでした。

フランスの大学のチームが、なんとパイロット波の可視化に成功してしまったのです。

実験はこんな感じ。すなわち細かく振動させた水の上に、非水溶性のシリコンオイルを一滴垂らします。垂らしたシリコンは、水面からバウンドするような動きを見せました。このへんは理解の範疇です。水と合わせて揺れる水面近くの空気がクッションとなり、沈むよりも先にシリコンを弾き返したのでしょう。

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ここまでは良いのです。しかし、シリコンの観察を続けると、今度は曲線を描いて動き出したのです。水面は水平であり、外部からエネルギーは加わっていません。しかし、何らかの規則性を持って、水面の波紋に導かれるように、確かにシリコンは動いています。

やがてこの実験を受けたMITのチームは、この波紋こそが、パイロット波と同一と考えます。ではどうやって同一だと証明するのか。

そうです。ここでもう一度、「二重スリット実験」です。

振動する水面に落としたシリコンを使った、二重スリット実験。その結果は、見事に干渉縞が生まれました。ミクロの世界の話だった量子論が、人間の肉眼で見える世界で再現されたのです。

もちろん、これはただ干渉縞が生まれただけで、量子論がマクロに当てはまるというわけではありません。量子におけるパイロット波の存在が証明されたわけでもありません。

しかし、ミクロとマクロの類似性は、「ミクロは異世界」と考えてしまいがちな量子論の思考を、新たな段階に引き上げたように思えます。つまり、ミクロの延長線上に、僕達の見える世界があるということ。

量子論だから認められた不可思議な現象もまた、物質世界に何らかの影響を与えているのかもしれません。

 

 

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