[外堀から埋める07]相対性理論は、何を変えたのか?

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2つの相対性理論

さて、いよいよ相対性理論の話です。相対性理論は「特殊」と「一般」の2種類があり、言葉のイメージとは逆に、「一般」の方がずっと難解です。これは「特殊」は、「特殊な条件下でのみ確立される理論」であり、「一般」は「一般的な状況でも普遍的な理論」であるため。ちなみに特殊な条件下とは「等速直線運動」であり、自然界にはあまり見られません。つまりあくまで「理論」ということですね。

ではまず、その「特殊」相対性理論とは、どのようなものなのか。さっそくひとつずつ見ていきましょう。

光の速度は常に一定である

思い浮かべてください。高速道路を時速120kmで走っているとき、追い越し車線を時速140kmのポルシェが抜かしていった。ではあなたからポルシェの速度は時速何kmに見えたか?

そう、時速20kmですよね。同じ方向に進んでいるのですから、相手の速度から自分の速度を引くだけの簡単な計算です。反対に対向車線を時速120kmですれ違う車は、時速240kmに見えるわけです。お互いに時速120km同士で近づくわけですから。これが物理法則です。

光にだけ当てはまる原理

しかし「光」の場合はこれが違いました。自分がどちらに向かって、どれくらいの速度で移動していようと、光の速度は常に変わらなかったのです。秒速30万km。これが常に変わることのない光の速度です。

少し視点を変えて考えてみましょう。たとえば長さ60万kmの電車があるとしましょう。その中心で電球をつけると、先頭にも最後尾にも、光は1秒後に到達しますね。

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ではこの電車が、秒速15万kmで走っているとしましょう。あなたは電車のなかに立ち、車両の中心から、電球をつけます。

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先頭車両は秒速15万kmで逃げていくわけですから、光が到達するのに1.5秒かかるはず。逆に最後尾は秒速15万kmで近づいてきますから、到達には0.5秒。それぞれの移動距離は45万kmと15万kmになります。

にもかかわらず、この場合でも、先頭と最後尾に光は同時に到達するのです。従来の物理法則では説明のできない現象でした。

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アインシュタインは考えます。動く対象においても、光の到達速度が同じというのは、実験から見出した紛れもない事実である。ならば、その解釈を変えるしかない。

つまり、「光が1秒間に30万km移動する」のではなく、「光が30万km移動する時間を1秒とする」のだ。

1秒間という時間の概念

たとえば高さ15万kmの部屋の天井に、鏡を取り付けます。そして地面で電球をつけると、光は0.5秒で天井に到達し、反射してもう0.5秒かけて戻ってくる。だからこれは1秒です。

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しかし、もしもこの部屋が高速で移動していたらどうでしょう?

部屋のなかにいる人にとっては、光は真上の鏡に向かい、戻ってくるように見えるでしょう。しかし部屋の外から観測している人から見ると、光は下図のように斜めの経路を進んで鏡に向かい、また戻ってくるまでも斜めの経路となります。つまり移動する距離が長くなっているのです。

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これが何を意味するのか。部屋のなかから見れば光は往復30万km移動しましたから、つまり1秒が経過しました。

しかし外から見ると、1秒の時点では、まだ光は戻ってくる途中です。1.5秒経過してようやく下に光が戻ってきました。つまり、外で1.5秒経過する間に、なかでは1秒しか経過していないのです。

このように時間の経過が、絶対的ではなく相対的であること。これが特殊相対性理論が示したひとつの事実です。

少し長引いてしまいましたの(主に図版づくりに)、次回に続きます。