[外堀から埋める10]一般相対性理論が示す空間の歪み

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特殊相対性理論一般相対性理論

前回までの特殊相対性理論は、名前の通り「特殊な状況下でのみ」認められる論理でした。その状況とは、等速直線運動。電車の例のように、あるいは算数の問題のように、一定の速度でまっすぐに進む物体にのみ適用されるということです。

そんな特殊相対性理論の発表から10年後、アインシュタインは満を持して一般相対性理論を発表しました。「一般相対性原理」つまり、動いている人にも止まっている人にも、宇宙の天体にも、海の底にも、あらゆる一般対象に共通する原理というわけです。

そしてこの理論は「時間が遅れる」「重くなる」「縮む」という特殊相対性理論に加え、さらなる未知の世界を提示してくれました。

一般相対性理論が示す重力の不思議 

一般相対性理論がまず説明してみせたのは、重力/引力の問題です。重い物体には強い重力が働くというのは、ご存知「万有引力の法則」です。万有ということは、軽い物体にも引力はあるということ。地球にも、月にも、そして私たち人間にも、引力はあります。私たちは地球にただ引きつけられているのではなく、地球とお互いに引きつけ合っているのです。

ではなぜ、重い物体に強い引力があるのか。一般相対性理論はそれを、空間の歪みで説明します。

想像してください。ここにトランポリンと2つの玉があります。

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では、まずトランポリンに軽い玉を置いてみます。

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急に横からの図になったのはパワーポイント力の限界のためです。察してください。とにかく軽い玉を置いてみると、

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わずかですがトランポリンがたわみます。まわりはこの軽い玉に引きつけられます。

次に、この同じトランポリンに重い球を置いてみます。

 

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すると、

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表面は大きくたわみ、軽い玉は重い球に向けて転がりました。これが重力です。しかし世界は2次元のトランポリンではありませんし、私たちの目に映る世界も歪んではいません。

では、どの方向に歪んでいるのか。そこで登場するのが次元の話です。

以前、上の次元の存在は知覚できないという話をしました。知覚はできません。どの方向に歪んでいるのかはわかりません。しかし確かに空間は歪んでいるのです。

なぜそう言い切れるのか。それは観測されたからです。

実際に観測された空間の歪み

ある皆既日食の日、星を観測することで空間の歪みを実証しようという試みが行われました。太陽は巨大な質量を持ちますから、一般相対性理論が正しければその周辺の空間は歪んでいるはずだ、と。皆既日食の日が選ばれたのは、単に太陽がまぶしくてそれ以外の日だと星が見えないからです。

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結果、星は本来ある場所から離れた場所に観測されました。見事に理論通り。星の位置は、実際の場所よりも太陽から遠く観測されたのです。これは星の発する光が太陽の側を通るとき、時空の歪みにより曲がってしまったため。場所も予測した通りでした。

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光が太陽の重力で引きつけられたのでは? という疑問もあるかもしれませんが、思い出してください。光の粒である光子に、質量はありません。そのため(従来の)引力の影響は受けないはず。つまり重量に引かれるのではなく、空間そのものが歪んでいるというわけです。

空間の歪みと時間の関係

では、空間が歪むとどうなるのでしょうか。歪んでいるわけですから、いろいろと影響も出てきますが、一番はやはり時間の流れでしょう。

たとえば重い天体(=重力が強い)に向かって光が進んできます。

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強い重力下では空間が歪んでいますから、光は下図のように曲がります。

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では、この曲がった部分に注目して見てみましょう。

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光の速さは常に一定(秒速30万km)でした。そしてスタートからゴールに届くタイミングも同じです。速度が同じなのに、距離が違う。それはつまり、かかっている時間が異なるということです。

たとえば内側の光が100km進む間に、外側の光は120km進む。それは内側の時間は遅く、外側の時間は早く流れる、ということを意味します。

そして内側は天体に近いため、重力が強い側ですから、上記を言い換えると、重力が強い方が、時間は遅く流れるということになります。

 ならば地球の中心に近い海の底と、中心から遠いエベレストの頂上で時間の1秒の長さが違うのか? そうです。違います。

 

相対性理論が示したのは、今まで確かな指針だと思っていた概念が、実は相対的だということでした。つまり、世界一正確な時計が1秒を刻んだとしても、それを見ている場所によって、その時間は異なるのです。

つまり、世界の理とは、観測してはじめて意味を持つということ。観測とは「意思を持って、見る」こと。すなわち意志が世界を作っているというのも、決して極論ではないのです。

 

次回は引き続き宇宙の話について。