[外堀から埋める15]シンクロニシティとカラーバス効果

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シェルドレイクの仮説

たとえばペットと飼い主の話。

不規則な仕事に従事する飼い主が会社で帰り支度を始めると、離れた家にいるペットがそわそわし始める。

これはケンブリッジ大学の生物学者ルパート・シェルドレイクが唱えた仮説を元に、日本のテレビ番組が実験を行い実証した事実です。

あるいは騙し絵の実験も有名ですね。

一見すると何が描かれているかわからない騙し絵AとBを用意し、まず道行く人に訪ねます。ほとんどの人が、どちらの絵も何が描かれているか答えられません。次に最初の1枚である「騙し絵A」の解答をテレビで公開し、もう1枚の「騙し絵B」の解答は秘密のままにします。

このテレビの放映後、再び道行く人にテストをしてみます。すると当然「騙し絵A」の正解率が上がり、「騙し絵B」の正解率は変わりません。それはそうだ。直接テレビで見たか、視聴した知り合いとの話題にでも上ったのだろう。

それは違います。

「騙し絵A」の正解率は、このテレビ番組がまったく放映されない遠隔地や僻地においても、同様に上昇したのです。

(参考:『世界を変える七つの実験』ルパート・シェルドレイク著)

 

通常、世界の現象のすべてには、原因→結果という流れがあります。

太陽光により海水が温められて蒸発し、密度の減少にともない上昇、気圧の低い上空で冷やされて水の分子が結合し、質量を増して雨として地上に落下する。物理学で説明できる原因と結果であることから、これを「因果性」と呼びます。

一方で、上記のように離れた場所のペットが主人の帰宅を察知すること、第三者の得た知識が離れた場所に伝播することなど、一見して現代物理学で原因が特定できず、結果だけが表れる現象をシンクロニシティ共時性/同時性)と呼びます。

ちなみに訳語が2種類あるのは、リンカーン大統領とケネディ大統領の暗殺における不思議な符合のように、距離だけでなく時間を越える偶然の一致もあるため。子どもの頃に北海道で拾って何故か大切に持っていた石の欠片の断面が、新婚旅行で訪れた沖縄で拾った石の断面とぴったりくっついた、なんて話もありますね。

たとえば、あなたがパソコンで文書を打っていて、ENTERキーを押した瞬間に、遠く離れた国で地震が起きました。これはおそらくただの偶然です。

しかし、同じ状況でENTERキーを押した瞬間に停電が起きたとしたらどうでしょう? あなたは自分の行動と起きた現象(停電)の因果関係を考えることでしょう。

因果の特定は困難であるけれど、対象者に何かしらの意味を考えさせる偶然。これがシンクロニシティです。

身近なシンクロニシティ

シンクロニシティは、なにも先の例のような大それたものだけではありません。

ふと街中でスパイス香りを感じてカレーが食べたいなと思っていたら、帰宅後の夕飯の食卓にカレーが並んだ。友達に連絡を取ろうとスマホを取り出したら、ちょうどその友達から連絡が来た。ふと時計を見ると、なぜか自分の誕生日の数字であることが多い。これらもシンクロニシティの例です。

原因はなく、ただ結果だけがやってくる。表面的にはそう見える現象。しかし、私たちが常識の拠り所とする物理学は、因果性の学問です。理由のない結果はない。結果があるなら、何かしらの理由がある。

ユングはその理由を、人間の意識同士が無意識下で交流しているからとしました。そしてその説は、たしかに身近にあるシンクロニシティの理由を、矛盾なく説明することができています。

しかし、無意識下で交流するネットワークは? 交流の媒体は? そのための器官は? これは本当に科学なのか。あるいはオカルトなのか。その結論は長い間見つかりませんでした。

カラーバス効果

特定できない因果の説明としてカラーバス効果が用いられることがあります。色(カラー)を浴びる(バス)でカラーバス。よく間違われていますがカラーパスではありません。念のため。

これは意識を向けた情報がより多く舞い込んでくるという心理学的効果のこと。

たとえば今すぐに、まわりをぐるりと見渡してみてください。

はい!

 

さて、今見た景色のなかに、緑色ってありましたか? ではもう一度、緑色を意識して見回してみてください。

どうでしょうか? 思っていたよりも多く、身の回りには緑色があるのではないでしょうか? 

これがカラーバス効果です。DoCoMoからソフトバンクに変えたら、毎日使っている駅前にソフトバンクショップがあったことに気づいた。携帯電話が壊れてはじめて、家の目の前に公衆電話があることに気づいた。これらもカラーバス効果ですね。

ビジネスシーンにおいても非常に有用な考え方である上に、引き寄せの法則とも親和性の高いカラーバス効果。いずれまた詳しくお話しようと思いますが、今回はシンクロニシティとの関連性について。

たとえば先の「時計を見ると自分の誕生日の数字であることが多い」というのは、カラーバス効果で十分に説明ができそうです。他のときに時計を見ても、時間だけを見てとくに意識はしない。それが自分の誕生日という意味のある数字のときには「お! 誕生日やんけ!」となって意識に刻まれる。だからその確率が実際よりも高く感じられるというわけです。

でも、本当にそれだけでしょうか? 特別な数字を目にすること、意外と多いですよね。それが意識に刻まれるだけで、ここまで差が生まれるものなのか。さらにカラーバス効果だけではどうにも説明のつかない意識の伝播はどうなのか。

次回、それらの答えを探します。いよいよ外堀も埋まってきました。