はじめに
前回は対象を多角的に捉えるためには、自己の拡大が必要という話でした。ここで間違えてはならないのは、自我の拡大ではなく、自己の拡大という点。自我を抑制するために自己を拡大するのです。哲学です。
自分の観測位置を変えるだけでは、物事の異なる側面を見ることはできるけれども、その一側面がすべてになってしまう。昨日の三角コーンの例でいうなら、横から見ていて三角だったものが、自分が上から見下ろして見たら丸になる。しかし今度は「丸いもの」という単一の判断になってしまうよ、ということです。
複数の側面を同時に見るには、自己を拡大するしかないということでした。
でも、本当にそうなのでしょうか? 例えば自分を可能な限り拡大したとして、裏側を同時に見ることはできないような気もします。
上図のようなイメージです。いくら拡大しようとも、死角というものは存在しそうな気もします。
自己の拡大の実践
ここでひとつ考えてみましょう。
いま、みなさんが居る地球上の位置から、ちょっと上昇してみましょう。もっと上です。大気圏を飛び出して、宇宙空間へ。月の近くまで行ってみましょうか。暗い宇宙のなかにポツンと浮かぶ美しい地球、きっと以前に写真で目にしたことがあることでしょう。
今度はもう少し離れてみましょう。太陽系には太陽を中心に、8個の惑星が公転しています。赤く燃える太陽と、その周りに浮かぶ惑星。これもモデルなどで見たことがあるでしょうか。
今度はさらに遠くまで飛び出して、私たちの居る天の川銀河を想像してみましょう。ぼんやりした渦のような形の銀河が浮かびますね。太陽系の直径は約3光年、天の川銀河の直径は約33万光年。銀河のなかで太陽系は、小さな粒のような存在です。
まあこのへんで良いでしょうか。
さて、あなたは今、途方もない大きさの宇宙を心に描きました。つまり、あなたの心(≒思考)は宇宙が入りきるだけのサイズがあるわけです。
「ただ想像しただけだ」なんて思いますか?
でもさっきから出てる三角コーンだって、想像しただけじゃないですか?
あなたの意識が拡大して、そのなかに三角コーンがある。だから裏側だって見ることができるのです。
宇宙と自己の同一視
あなたは宇宙に行ったことがないのに、宇宙を思い描いた。
つまりあなたの宇宙は、あなたの心、意思、思考、記憶が存在させている。
そこに存在する物質もまた、あなたが存在させている。
なぜなら物質は宇宙の一部だから。
そして、あなた自身もまた、物質である。
つまりあなたは宇宙そのものである。
もちろん「あらやだ、私、宇宙だったの?」とワイドショーの不倫報道のようにあっさり理解できる話ではないでしょう。
しかし、この思考こそ、論理的思考を重ね、深い知見を得た科学者たちが最後に行き着く、哲学的思考なのです。多くの宗教が説く教義も、掘り下げるとこの思考に行き着きます。
繰り返します。
あなたの宇宙は、あなたが存在させている。
そのあなたもまた、宇宙の一部である。
つまりあなたが常識であると考えている後付けの価値観も、
あなた自身が存在させている。
ならば存在させないと決めれば、その存在理由はなくなる。
すべての決定権は、あなただけが持っている。
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